「SEの処世術」という本を読んだ。著者の主張から、システムエンジニアの僕も多くの事を考えさせられた。
「処世術」と聞くと世渡りばかりがうまい後ろ向きな印象を持つが、本書での処世術とはそうではない。
著者は、SEとは「サラリーマン」であり、「職人」であり、「芸術家」であると主張する。特に、職人である事を重視しているように読める。そして、職人である事を実践する手段としてサラーリマンとして振る舞う方法を、行動の基準となる思想の重要性を芸術家という言葉で説明したのだと思う。むしろ職人として積極的に行動する為の方法や考え方が書かれた本だ。
著者の主張は、エンジニア向けサイトやSEの仕事術系の本で一般的に言われている事と正反対の事が多い。例えば、一般的に重要だと言われるマメな報告・相談・連絡を否定する。障害発生時にそれではただの連絡係であり、価値の無い人材だからだ。実際の問題以上に大きな騒ぎになるのを防ぐ事にもあるとする。そして、自力で解決し事後に解決した旨を報告すれば良いという。
著者の主張は極端だ。しかし、そのおかげで反論を考えるなど自分の意見を構築するのに役立つ。また、意見と理由、それにそった具体的な経験をそろえて書いてあるため、日頃の仕事での行動に反映しやすい。経験は必ずしも成功した事だけでなく、失敗談もある。失敗談でも長期的に見れば評価されていただろうという話は、実際に職場で行動したときに上司から叱責されてもその行動を続けるか、改めるかの判断材料になる。主張が体系立っているのも説得力がある。この辺は Web の短い文章には無い利点だ。
本書の読者にとっての最大の利点は、職人的なエンジニアの主張を体系的に知る事が出来る事だろう。なぜなら、それを語る人が少ない貴重な情報だからだ。
僕はSEとしてあるプロジェクトにいるときに、あるフリーで職人気質の凄腕エンジニアにかわいがって頂いたことがある。そして、仕事の場や飲み屋でさまざまな事を教わった。この本に書かれている事と重なる部分もある。そういった形でないと知り得ない事がこの本には書いてあると言える。僕自身の仕事術として役立つだっただけでなく、過去同じ職場にいた人の理解不能だった行動の理由を理解できた気がする。成果は高いけれど教科書的でない行動をするエンジニアだ。
この本は、新人SEや入社数年のSEには大変役立つと思う。ベテランにも役立つかもしれないが、僕自身にそれほどの経験がないからわからない。ただ、この本にそった行動は、ワーカホリックと紙一重なところがある。自分の考えを築くための材料として他の考えを知るのは重要だと思う。僕が読んだ本の中では、ストレス対策、働き過ぎ対策には「楽しそうに生きてる人の習慣術」、コンサルタントが教えるような仕事術を学ぶには「できるSEの仕事術」、「SEが28歳までに身につける28の力」がそれにあたると思う。
- 作者:
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2004/01
- メディア: 単行本
SEライフ〈Vol.1〉SEが28歳までに身につける28の力
- 作者:
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本